PREVENTIVE
腫瘍科担当獣医師:白石
獣医腫瘍科認定医
現在、犬や猫の死因のトップは悪性腫瘍(がん)となっています。
動物医療においても近年、新しい治療法が出ていますが、動物も人と同じで、早期発見・早期治療がとても重要となります。
言葉を話すことができない動物たちは特に症状がでるまで発見することができないことも多いのが現状です。
がんと聞くと「治療しても完治することはない」という印象もあるかと思いますが、実際は動物医療も日々進歩しており、完治または完治に近い状態を目指すことができることも事実です。
当院では、さまざまな腫瘍に対して多くの治療を行っています。
本来自分の体内にある細胞が、自律的(勝手に)無目的かつ過剰に増殖する状態と定義されています。腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けることができ、その違いは悪性腫瘍の場合は「転移」をすることが特徴であり、良性腫瘍で転移することはありません。
一般的に「がん」=悪性腫瘍のことをさします。
悪性腫瘍は、元となっている細胞の由来によって分類されており、固形がん、独立円形細胞の2つに分類され、固形がんはさらに癌(がん)と肉腫(にくしゅ)に分類されます。 悪性腫瘍の分類によって、治療法が大きく変わるため、どこに分類される「がん」なのか診断することはとても重要になります。
血液の細胞であるリンパ球が腫瘍化する血液のがんです。
血液のがんなので、全身性の疾患です。
そのため手術や放射線治療ではなく抗がん剤治療が選択されることが一般的です。
早期に発見し、適切な治療を行えば、十分生活の質を高め、寿命を延ばすことできます。 症状は、体の表面のリンパ節が腫れてくるなどの典型的なものから、元気食欲の低下、嘔吐下痢など様々あります。
気になる症状があればなるべく早く診察を受けましょう。
乳腺にできる腫瘍で、犬では50%の子が良性、残り50%の子が悪性といわれています。 一方猫の場合、乳腺にできた腫瘍は80~90%の子が悪性です。
悪性度が高いものを放置しておくと、肺など他の臓器への転移や、腫瘍が細菌感染を起こし痛みを伴う可能性があります。治療には外科手術が一般的で、早期に発見することができれば手術で十分対応することができます。
月に1回は自宅でも乳腺まわりを触っていただき、もし、しこり状のものがあればご相談いただくか診察に来ていただけたらと思います。
犬では皮膚にできる悪性腫瘍の中で一番多い腫瘍です。猫の皮膚腫瘍で三番目に多いと言われています。全身のあらゆる部位に発生する可能性があります。
肥満細胞腫のやっかいなところは、見た目が一般的な湿疹と同じように見えたり、ただのイボのように見えたりすることあります。
また、肥満細胞腫は、たくさんの炎症を引き起こす物質を出すため、皮膚が赤くなったり、嘔吐などの消化器症状が出たりすることもあります。
皮膚に気になる症状があれば、早めの診察を受けましょう。
がんの治療法は現在、様々な治療法が出て来てはいますが、確立されている治療法としては外科療法、化学療法、放射線療法が腫瘍の3大治療といわれており、現在も腫瘍に対する治療の主軸を担っています。
腫瘍に対する治療は目的によって大きく分けられ、完治を目的とする根治的治療、症状を和らげることを目的とする緩和治療、腫瘍の発生や再発、転移などを予防する予防的治療があります。
それぞれの患者さんの状態によって、飼い主様と相談しつつ、治療の目標を決めさせていただけたらと思います。
腫瘍内科療法はいわゆる「抗がん剤治療」です。
抗がん剤と聞くと、人医療で知られている嘔吐や脱毛などの副作用が重篤にでてしまうイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、実際の動物の抗がん剤治療は、生活の質 を落とさないように腫瘍を叩き、オーナー様とより良い時間を過ごしていただくことを目標にしています。
手術や放射線治療などの局所療法に対し、抗がん剤治療は全身療法になります。そのため、あらゆる腫瘍に対して行うことのできる治療ではありますが、腫瘍の種類によって治療の効果は異なります。獣医療の発展とともに動物たちの高齢化も進んでおり、人と同様に動物たちも高齢になればなるほど腫瘍になりやすくなります。
抗がん剤は良く知られているように、腫瘍細胞だけでなく、正常細胞にも作用するため、副作用を起こす場合があります。
しかし人医療に比べると、犬や猫で使用する抗がん剤の量は少ない量に設定されており、重篤な副作用を起こすことは稀です。実際には動物や腫瘍の種類によって抗がん剤の量は異なります。最初に抗がん剤を投与する際は、「その子にとって適切な抗がん剤の量」がわかっていないため、初回はすでに決まっている推奨量で開始します。
抗がん剤治療は手術で腫瘍を取り除く場合と比べると、体から腫瘍を無くすという意味では劣ってしまいます。抗がん剤が効きやすいリンパ腫などでは、抗がん剤治療のみで完治できる時もあります。抗がん剤治療が適応になるケースは様々であり、術後の補助療法として完治を目指していくのか、外科手術が困難な大きな腫瘍の増大を少しでも抑えるために緩和を目的として治療するのかによっても異なりますので、残念ながら一言で完治できるとは言えません。一方で抗がん剤が効きにくいと言われている腫瘍でも、完治に近い「寛解(症状が消失した状態)」にまで治療できることもあります。
「がん」という病気に立ち向かうには、色々な不安がつきものです。当院では飼い主様の不安を一つでも多く取り除くため、しっかりとした説明を心がけています。
どんながんの疑いがあり、それを診断するためにはどの検査が必要で、何がわかるのか。 さらに、必要な治療法、全般にかかる費用、そして長期的な治療計画など、すべてを説明し、納得していただかなければがんという病気に立ち向かうことはできません。獣医師だけでなく、飼い主様の積極的な治療への参加と、自宅での愛情あるケアがなければ治療は成立しません。
何かお聞きになりたいことがあれば、どんなことでも遠慮なくご質問ください。そして、一緒になって頑張っていきましょう。